仏壇やお墓に供える花と言えば菊といういうイメージがありますよね。しかし、元々は仏事とはあまり関係がない、観賞用として人気の花だったようです。菊は日本を象徴する皇室の家紋に使われているイメージもありますが、江戸時代は庶民の間でも園芸用として親しまれていたそう。そんな日本人に長く愛されてきた花なので、仏花としても使われるようになったと言われています。
菊は元々、中国から渡ってきた外来種です。平安時代の『古今和歌集』あたりから菊を読んだ歌が登場するようになり、この頃から日本で馴染みのある花になったことがうかがわれます。園芸ブームによって品種が一気に増えたのが江戸時代。当時は花型の変化が楽しめる品種が求められ『江戸菊(写真下)』『嵯峨菊』『肥後菊』など全国各地で独特の発展を遂げた菊は『古典菊』と総称されました。
その多彩さは幕末後に訪れた外国人を魅了し、本家中国に逆輸入され、ヨーロッパでは特にイギリスの園芸品種に大きな影響を与えるほどだったそうです。
皇室の紋章になったのは、鎌倉時代に後鳥羽天皇(1180~1239)が菊の紋をとても気に入っていたことに由来するそうです。今、アニメの影響で日本刀に興味を持つ若い女性が増えているというニュースを見ましたが、この後鳥羽天皇は自ら刀を作っていたと伝わるほどの刀好き。その刀剣には菊の紋が刻まれています。その後、代々の天皇に引き継がれ、皇室の紋章が菊花紋章と定められたのは大正15年(1926)のことです。
江戸時代の葵紋は当時、将軍家以外の使用は厳禁とされていましたが、菊花紋の使用は自由とされたため、和菓子や仏具の飾り金具の意匠に使われてきたことで、今のように日本全国、生活の中で身近に見かける存在となりました。
菊を調べていると、昔から人々に愛され続けてきたことがわかりました。
日本の春を華やかに彩る、花の中でダントツの人気を誇る『桜』に対して、秋の花『菊』はちょっと地味な存在……と思いきや、実はパスポートの表紙の絵柄として世界中を旅していることもお忘れなく。実は『花の日本代表』なのかもしれませんね。